Song of the birds

ヨネダコウ先生の「囀る鳥は羽ばたかない」二次創作サイトです。同好の士以外の方は回れ右でお願いします…

2021-01-01から1年間の記事一覧

真夜中の鳥 (矢代) あとがき

※各ページのタイトルの下にある「真夜中の鳥」カテゴリーをクリックすると、シリーズ一覧が見られます。 以前、noteに、結局影山は矢代のことをどう思っているのか、を考察した記事を書きました。 https://note.com/preview/n8651b33c5b77?prev_access_key=f…

真夜中の鳥 8 (矢代)

八 久しぶりにクラスの全員が揃った3月15日、俺達は無事高校を卒業した。 少し肌寒い気候の中、卒業式が終わった構内は、参加した父兄やら集まったOBやらでごったがえしていた。 うちの学校は、卒業と同時に、OB会の強烈なお誘いがくる。卒業生全員が加入…

真夜中の鳥 7 (矢代)

七 いつのまにか、季節は、もう秋から冬に差し掛かっていた。 学校から駅に向かう途中の、アカシアの並木道を、二人で、つかず離れずの距離で歩く。 足元で、風に巻かれた落ち葉が、くるくると回っていた。 「お前、薬師丸ひろ子、好きなんだな」 セーラー服…

真夜中の鳥 6 (矢代)

六 「こないだの全国統一模試の結果を渡すぞ!」 「エエエ~~ッ!! いらねえっすよ! せっかくの連休が!!」 「連休だから渡すんだバカども。休みの間に、間違ったところはちゃんと復習しとけよ!」 また、暑くても我慢の夏がやってきた。 影山は、もう絆創膏…

真夜中の鳥 5 (矢代)

五 「──まあ、そういうことだから。……本当は、親御さんとちゃんと話したかったが……だが、お前は、本当は自分が何やってるかわかってるんだろう? ……お前は頭がいい。ちゃんと、自分のため、将来のため、何を選ぶべきか分かっているはずだ。……家庭の事情は、…

真夜中の鳥 4 (矢代)

四 「──俺、バイなんだ」 その日、いつものように影山に傷痕を触らせながら、なんでそれを口にしたのか、実はよく覚えていない。 本当に、完全に思いつきだったんだと思う。 なぜなら、頭では、それを切り出したらこの関係が終わる、とわかっていたからだ。 …

真夜中の鳥 3 (矢代)

お前は、大人にならないでいい。 ずっとそのままで、可愛い────のままで。 それが呪いの言葉だったと知るまでに、数年を要した。 俺はたぶん、記憶力は悪くない方だと思っている。 5歳くらいから小学校2年までの記憶はわりとはっきり残っていて、中でも小学…

真夜中の鳥 2 (矢代)

「矢代、やる。……見えてるぞ、腕」 俺がこっそり絆創膏男、と名付けた影山は、それから、頻繁にそういって俺に数枚の絆創膏を渡してくるようになった。 曜日は決まって月曜日。つまり、週末に、ヤクザ相手にやられまくった直後だ。 困ったことに、手を縛られ…

真夜中の鳥 1 (矢代)

一 出席番号は、いつも最後か、最後から2番目。 1番から名前を呼ばれて、クラスのほぼ全員が返事をし終わった頃には、苗字が「や」で始まる人間のことなんて、誰も気に留めていない。 だから、小さい頃は、「あ」行か「か」行で始まる名前に憧れた。 「あ…

真夜中の鳥 0 (矢代)

今日も、また一歩、足を踏み出して歩く。 今朝も、ここに、生きている。 人と人との間には、適正距離というものがあるらしい。 公衆距離。全くの他人との距離は3m以上。 社会距離。知人や先輩、上司なら1.5m。 個体距離。親しい友人や同僚なら、45cm~1mくら…